芸術家として国内外で活躍する横尾忠則さんの連載「シン・老人のナイショ話」。今回は、「鬼やお化け」について。
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「アニメのブームもあり、鬼やお化けが注目されています。鬼やお化けはお好きですか、お嫌いですか。それとも鬼やお化けになりたいと思ったことはありませんか」
鬼やお化けは大嫌いです。でも鬼やお化けになって、人を怖がらせるのは大好きです。
でも鬼やお化けは存在していると思います。だから怖いんです。僕は鬼やお化けなどの妖怪のたぐいは見たことはありませんが、幽霊は何度も見ています。幽霊とお化けは僕の中では区別しています。鬼とお化けは人霊ではなく、自然界に存在している動物霊や精霊みたいなもので、こうした物に波長の合う人は、それを見るんだと思います。だから架空の存在とは思えません。文明の進化していなかった大昔にはこうした自然霊と波長の合う人は沢山いたと思います。だからそうした人の体験の記憶が、鬼やお化けの姿で伝わっているんだと思います。自分は見たことがないから、いないというのは間違っています。
明治生まれの父は大阪の河内で生まれましたが、その父は子供の頃、ある日、池で泳いでいたら、水中から足を引っぱる者がいて、もぐって見ると、そこにガタロー(河太郎)と呼んでいたカッパがいたというのです。頭に皿があって皿の周囲から毛がたれていて、背中に甲羅がある、よく絵などで出てくるカッパそっくりの生物が、父の足を引っぱって水中に沈めようとして、水の中でおぼれたそうですが、幸い助けてくれる人がいてカッパから逃れることができた、という話を僕の子供の頃、何度も同じ話を聞かせてくれました。カッパを見たという人は現在でも時々いるので、今でも存在していると思います。
また僕の年上の友人で映画俳優の土屋嘉男さんは、病院で2回も小人を見ています。小人と言っても30センチ位の人間で、それが病室の中で何人もいて、土屋さんの病状についてペチャクチャ話していたそうですが、話の内容まではわからないと言っていました。2回目の体験は別の病院で、ケガをして集中治療室に入れられた時も、何人かがベッドの周辺にやってきたと言っていましたが、医師が現れるとどこへともなく隠れていなくなったと言っていました。これも、やっぱり精霊というか、可愛い存在なので妖怪のたぐいではなかったようです。