さらに低い順位にいるのが、2005年からJ1舞台で10年間戦った実績を持つ大宮だ。J2降格1度目は1年の即J1復帰を果たしたが、2度目に降格した2018年以降は2年連続でのプレーオフ敗退の後に15位、16位と低迷。迎えた今季は、「変革のシーズン」と謳いながらも、開幕9戦未勝利(3分6敗)と躓いてJ3降格争いに巻き込まれる緊急事態となり、第18節終了時点(4勝5分9敗)で霜田正浩監督を解任して相馬直樹監督体制へ移行となった。
それでもなかなか結果が出ず、第38節終了時点で消化試合が1試合少ないとはいえ、勝点38(9勝11分17敗)の19位と後ろに3チームしかいない順位に甘んじている。ただ、攻守両面で高いインテンシティを求める新指揮官の戦術が徐々にではあるが確実に浸透し、8月に入った第30節以降の8試合は4勝1分3敗と成績は上向いた。まずはJ2残留を決め、今年4月にフットボール本部長に就任した原博実氏の人脈にも期待しながら、来季は精度を高めた「相馬スタイル」で勝負することになる。ここでチームが変わらなければ、当分は「J2沼」にハマったままになってしまうだろう。
前例を振り返ると、浦和、G大阪、広島、神戸、名古屋、柏のように降格初年度に“即昇格”を果たし、J1仕様の戦力を保持したまま危機を乗り切ることが「J2沼」にハマらない“コツ”だろう。あるいはC大阪のように2、3年かけて若手主体のチームに作り直すという方法もある。だが、J2暮らしがと長引くと、人件費や選手自身のキャリア選択の問題で戦力低下は避けられなくなり、「J2沼」に片足から両足、さらに胴体までも沈んでしまう。
もちろん「沼」の戦いも熱く激しく、魅力的なものではあるが、プロのクラブであるならば「上」を目指すべき。J1舞台で戦った記憶がまだ僅かでも残っている間に、勝者のメンタリティー、J1クラブのプライドを取り戻してもらいたい。Jリーグ発足30年が経った今、そろそろ「伝統復活」、「栄光再び」と言えるクラブの出現を期待したい。(文・三和直樹)