
忘れてもいい記憶を「きちんと」忘れること、これこそが脳を柔軟な状態に保つのに欠かせない。忘れることは、新しい情報を記憶として取り込み、自分の頭で考え、人間として進化していくために最も重要なことだったのである。
この本ではまず、「記憶の正体」と「記憶が消去されるまでの流れ」を見ていく中で、忘れることが脳機能を高めるうえで、いかに重要なのかを知ってもらう。そして、どのようにすれば「忘れてもいい記憶」や「嫌な記憶」をきちんと忘れ、「忘れてはいけない記憶」を維持できるのか、その方法論を探っていく。
また、加齢により物忘れは増えていくが、代わりに年を重ねた分だけ増えていく〝別の記憶"があることについても触れていこう。読み進めれば、忘れっぽくなっても自信がつき、忘れへの向き合い方も随分と変わるはずだ。
そして本書の後半では、脳機能向上や「適切な記憶」のために効果的な習慣を見ていく。睡眠や運動などの習慣が、実は記憶や忘れにも影響を与えているのだ。記憶を左右する習慣を知らないと、普段から「忘れてはいけない記憶」を忘れてしまい、逆に「忘れたい記憶」を忘れられなくなるようなマイナスの習慣を続けてしまいかねないため、目を通していただきたい。
本書を読み終える頃には、忘れることこそが健全な脳機能を維持し、新たな記憶を獲得するうえで重要であることがわかるだろう。ご高齢の方だけでなく、忘れっぽさに悩むビジネスマンや、読んだ内容を忘れてしまう読書好きの方まで、きっと多くの気づきがあるはずだ。
《記憶を獲得するために重要な「忘却」。どのようにすれば「忘れてはいけない記憶」を維持し、「忘れたい記憶」をきちんと忘れることができるのか?『忘れる脳力』(朝日新書)で詳述している》
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