複数回の緊急事態宣言で大打撃を受けた外食産業。2021年の市場の全体売上は、コロナ前の2019年比で16.8%減でした(外食産業市場動向調査)。その一方で、「すき屋」などを運営する外食大手のゼンショーは、約139億円と過去最大の利益を上げています(22年3月期決算)。何があったのでしょうか? 『100分でわかる!決算書「分析」超入門2023』より紹介します。
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牛丼のすき家やファミレスのココスなど、20の飲食ブランドを展開する外食大手のゼンショー。2022年3月末時点で、国内外に10078店舗と130のグループ会社を有し、国内外食産業では日本マクドナルドを抜くトップクラスの売上、資産規模を誇ります。
21年度は、前年に引き続き新型コロナウイルスが蔓延。各地の自治体から飲食店に対する時短要請が繰り返し出されましたが、業績にはどれほど影響を与えているのでしょうか。
【表2】の損益計算書を確認すると、売上はコロナが猛威をふるう前の20年3月期を上回り、過去最高となっています(1)。
時短営業にもかかわらず増加したのは、新たに387店舗を出店したため。うち、海外での出店数は294店舗にのぼり、特に北米やオーストラリアでの事業拡大に力を入れています。一方、食材価格高騰などで原価が増加(2)。その結果、粗利率は4.4ポイント低下しました(3)。アルバイトを中心に人件費を抑制した(4)こと等で販管費率が下がってはいます(5)が、それでも原価の上昇ぶんを補いきれず、営業利益は前期比23.6%減の92億円(6)。営業利益率は1.4%まで低下し(7)、運動効率は大きく落ちています。
■損失を大きく上回る協力金等で過去最高益を達成
大幅な営業利益減にもかかわらず、最終利益は139億円と、前期の約6倍に増加(8)。なんと過去最高益を達成しました。
その源泉は、政府から支給されたコロナ対策金です。営業外収益に補助金128億円を計上(9)(表中の補助金額はコロナ対策以外のものも含む)。また、特別利益として、時短の要請協力金が246億円(10)計上され、あわせて374億円も利益が底上げされています。これはコロナ前の20年3月期営業利益209億円の1.8倍の金額です。同社は感染症対応損失を計111億円計上(11)していますが、逸失利益を加味しても、補償は十分でしょう。
また【表3】を見るとわかるように、営業キャッシュ・フローでは、協力金のおかげでコロナ前を上回る454億円の現金が流入(12)。
投資キャッシュ・フローでは過去最高水準の275億円を有形固定資産の取得に投じ(13)、協力金収入をも成長のバネにしていると言えます。
■投資家はココに注目! 世界一のフード業を目指し、成長をどのように舵取りするか
同社は次期、国内外で593店舗を新たに出店し最高益を更新する計画だ。「フード業世界一」という目標に向かって、25年3月期には売上9376億円、営業利益568億円(利益率6.1%)を目指す。今後3年間で1700億円を超える投資を計画しているが、これは営業CFを超える可能性がある。成長を急ぐあまり経営効率や財務の健全性が損なわれないか、注視したい。
※『100分でわかる!決算書「分析」超入門2023』より抜粋