Q 血縁者ががんになると、自分も同じがんになりやすいのですか?
A 遺伝によって起こるがんもある
がんには、遺伝が強く関係して起こる「遺伝性のがん」があります。
前のQでも述べたように、親から受け継いだ遺伝子に原因がある場合です。細胞には、遺伝情報を次世代へ伝える精子や卵子になる「生殖細胞」と、それ以外のからだを構成する細胞である「体細胞」があります。親から子に遺伝するのは「生殖細胞」の遺伝情報です。親の生殖細胞にがんになりやすい遺伝子の異常を持っていると、それが子どもに伝わることがあり、がんになるリスクが高まります。
遺伝性のがんには、若いころから起こりやすい、がんが多発しやすい、血縁者に同じがんが多いなどの特徴があります。大腸がんや子宮体がんなどになりやすい「リンチ症候群」、乳がんや卵巣がんになりやすい「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」などがその主な例です。母親や母親の姉妹(おば)、母親の母親(祖母)など、家系に乳がんの人が多いなど、遺伝性のがんが気になる場合は、血液で特定の遺伝子異常を調べることで診断できます。
また、がん診療連携拠点病院などでは、専門の医療スタッフによる遺伝カウンセリングを受けることも可能です。
なお、遺伝とは別に、喫煙や食生活など、がんのリスクを高める生活習慣が家族のなかで共通していることで、自分も同じがんになりやすいというようなことも考えられます。
(文・山本七枝子)
石黒 めぐみ(いしぐろ めぐみ)
東京医科歯科大学医療イノベーション推進センター准教授。専門は大腸がん。同大学附属病院大腸・肛門外科などで診療に携わったのち、新薬の承認審査、多施設共同臨床試験のプロトコル作成・運営などに携わる。共著に『大腸がんを生きるガイド』がある。