支持率低下に歯止めをかけたい岸田文雄首相が、旧統一教会問題で大きくかじを切った。宗教法人の解散にもつながる「質問権」について、「昨日の今日」で法解釈を変えた。世論を強く意識したとみられる。ようやく「聞く力」の出番か?
10月17日、岸田文雄首相は、官邸で永岡桂子・文部科学相に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への宗教法人法に基づく「質問権」の行使、調査をするよう指示した。
ただ、教団による被害の実態解明に向けての積極的な姿勢は見られなかった。
18日の衆院予算委員会で、野党の質問に対する答弁で岸田首相は、宗教法人の解散命令を裁判所に請求する要件について、解散命令にはハードルが高い「刑事罰」などが必要との見方を示し、「民法の不法行為は入らない」との考えを示していた。
それが19日の参院予算委では一転、民法の不法行為についても「入りうる」と発言した。
宗教法人法では「法令に違反し、著しく公共の福祉を害する行為をした場合」などが解散命令の事由にあたると定めているが、「法令」が刑法であるのか、民法であるのかなどは示していない。
岸田首相が一日で法解釈を変えたことについて、自民党のある幹部はこう推測する。
「岸田首相は支持率が急激に落ちていて、国会でも旧統一教会問題は追及されている。『(旧統一教会問題に)毅然(きぜん)たる態度で臨む』という姿勢を見せなければならない。当初は消極的だったが、このままでは支持率の下落に歯止めがきかないと周囲にも進言され、世論にも押し切られて打って出た。なんとか旧統一教会で頑張っているという姿を国民に示すための追い込まれた末の決断」
7月の安倍晋三元首相銃撃事件後、旧統一教会の霊感商法や合同結婚式などが、社会問題として改めてクローズアップされた。消費者庁でも8月下旬に、学識経験者や弁護士らを委員とする「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」が発足し、旧統一教会への対応などについて論議されていた。