草場医師によれば、かかりつけ医には次の2種類がある。
(1) 皮膚科や眼科、整形外科、脳神経外科など、特定の病気を診てもらうために定期的に通院している科の医師(クリニックから地域の総合病院、大学病院までの医師が対象となる)
(2) 高血圧などの生活習慣病からコロナ、風邪まで幅広く様々な病気を診てもらい、健康増進や予防医療の相談もできる医師(主にクリニックの医師)
「国が持つことをすすめているかかりつけ医は、(2)のかかりつけ医です。病気ごと、診療科ごとではなく、全身を幅広く診てくれる医師のことをさします。とはいえ、かかりつけ医がどんな医師かわかりにくいでしょう。なぜなら現在、かかりつけ医かどうかは、医師ではなく『患者さん側が決める』という理解になっているからです」
ならば「かかりつけ医はいらない」という人もいるかもしれない。診療科別の診療に慣れている患者からすれば、病気の都度、該当する科にかかったほうがよい治療をしてもらえるように思われてならないからだ。大病院志向が強い人が減らないのもこのためだろう。
これに対して草場医師は、次のように話す。
「それはもったいないですね。例えば大きな病気が疑われるとき、自分でいい病院を探すのは骨が折れます。この点、かかりつけ医はどこの病院に腕がいい医師がいるかの情報を持っている。治療に悩んだときも、かかりつけ医に気軽に相談にのってもらえますし、主治医に話しにくければ、上手に聞けるテクニックを伝授します。話せば解消できる不安も多いでしょうし、患者さんは余計なことを考えず治療に専念できると思います。いいかかりつけ医とは何十年もの付き合いになるでしょう。病気でないときでも、健康のことで聞きたいことがあったり、家族の困りごとにも対応してもらえる。まさに『一生モノ』だと思いますよ」
手術が必要な病気になったとき、まずかかりつけ医に相談したほうがいい理由については、後編で詳しく解説するが、問題はこうした医師にどこにいけば出会えるのか、一般の人にはわからないことだ。こうした背景から厚生労働省や日本医師会では、かかりつけ医機能やかかりつけ医がどうあるべきかの議論を始めており、22年中にも方向性を示すとしている。