草場医師によれば、現時点で「間違いなく、かかりつけ医の役割を果たせる」のは、研修プログラムで教育を受けた後に、試験でその能力を第三者から認定されたプライマリ・ケア(初期診療)の能力を有する総合診療科の医師であり、資格としては総合診療専門医または家庭医療専門医が相当するという。
ここでは二つの資格のいずれかを持ち、主にクリニックでかかりつけ医として従事している医師を「家庭医」として話を進めていきたい。家庭医とは、地域住民の健康のために働く総合診療医のことだからである。
ヨーロッパでは病院の医師である「specialist(専門医)」と、診療所の医師である「general practitioner(一般医、GP)」の 2種類に大別され、後者が家庭医の役割を果たしている。アメリカでも専門研修を受けた医師が家庭医として認定されており、そうでない「一般医」とは区別されている。
これに対して日本では医師の専門は臓器別に診療科が分かれているため、病気ごとに複数の医療機関をかけもちすることになる。これは持病が多くある高齢者には負担が大きく、多数の薬を併用することによる副作用などの有害事象を起こす「ポリファーマシー」につながりやすい。また、原因不明の症状の場合、病気が判明するまで複数の病院にかかることになったり、治療方針に納得できない患者がドクターショッピングを繰り返したりすることになりやすい構造だ。医療費や医療資源の無駄遣いという言い方もできるだろう。
このため、臓器別ではなく、1人の患者を包括的かつ継続的に診ることのできる家庭医が注目されているのだ。
「家庭医であれば患者の相談の80~90%は適切に解決できる。持病だけでなく、メンタルの問題から大きな病気が疑われた場合まで、健康についてなんでも相談できる友人のような存在と考えてください」
意外かもしれないが、腰痛の場合も「まずは家庭医に相談」でかまわないと言う。