「腰痛は尿路結石や急性膵炎など内臓の病気が原因ということも意外にある。急性膵炎の可能性がある場合、命の危険があるからすぐに救急車を呼ぼうとなります。悪い病気がないとわかれば、まずは痛み止めや湿布で様子を見ましょうか、とアドバイスをします。もちろん、必要に応じて適宜、整形外科に紹介をしますよ」

 会社や自治体の健康診断で、「要注意」や「要受診」などの結果が出た場合も、家庭医でそのほとんどは解決できる。患者の生活や家族構成までよく知っているので、オーダーメイドの治療を提供できる。

「例えば高血圧の場合、一般的な治療は運動や食事療法から始まることが多いですが、ご家族に心筋梗塞を発症した人がいれば、リスクが高いので早めに薬を始めましょう、ということもあります」

 こうした主治医の判断が命を救うこともあるだろう。

 問題は家庭医の数が圧倒的に不足していることだ。

 日本プライマリ・ケア連合学会の専門医制度により、これまで家庭医療専門医として認定された医師は22年9月29日時点で1047人。総合診療専門医は、まだ100人足らずという。

「総合診療専門医は、細分化された臓器別診療科の問題から幅広い病気に対応できる医師が必要ということで、日本専門医機構によって施行された認定制度。18年4月から始まったばかりです」

 そこで草場医師が期待しているのが、地域のかかりつけ医として従事している一般の医師たちだ。

「実は日本プライマリ・ケア連合学会の会員にも、家庭医療専門医の資格は持っていないものの、『かかりつけ医として、患者さんの役に立ちたい』という医師はかなりいる印象を持っています」

 ならば、こうした中からいいかかりつけ医を見つけるポイントはどのようなものか。草場医師に聞くと、次のような答えが返ってきた。

「風邪などで身近なクリニックを受診したときに、他の病気や家族の病気について質問をしてみてください。コロナのワクチンのことでもいいと思います。例えば『うちの妻が認知症かもしれないのですが』と聞いたときに、『専門外なので、わかりません』などの答えが返ってきたら、かかりつけ医には向かない。真剣に話を聞いてくれる医師であれば、候補として考えていいと思います」

*後編では、「患者が手術の必要な病気になったとき、まずかかりつけ医に相談したほうがいい理由」についてうかがいます。

(文・狩生聖子)