そして3シーズン目となる今季、ズエワと村元&高橋がフリーダンスに選んだのは、フィギュアスケートでは王道といえる楽曲『オペラ座の怪人』だ。『オペラ座の怪人』を滑っていた2006-07シーズンの高橋は、母国開催の世界選手権で表彰台に上がり、シングルスケーターとして飛躍を遂げていることから、この選曲は特別な意味を持つように思われる。高橋がアイスダンサーとして確かな自信を持ち始めた今季だからこそ、満を持して『オペラ座の怪人』を選ぶことができたのではないだろうか。
10月に入ってから、村元と高橋はそれぞれのインスタグラムに、ニューヨークの劇場で『オペラ座の怪人』を鑑賞した際の写真を投稿している。ブロードウェイで最も長い約35年という上演期間を誇るこの公演だが、来年2月で閉幕するという。高橋は「形あるものはいつかなくなる。本当にそうなんだなと」と感慨を述べた後、次のように綴っている。
「でも、だからこそ輝けるのかな?僕も限りある人生悔いのないように!あと、自分に素直に生きていこう」
シングルスケーターから、アイスダンサーへ。自らの競技人生を表現する『オペラ座の怪人』を悔いなく演じるため、高橋は村元とともに滑りを磨き続ける。(文・沢田聡子)
●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」