■自分の命守る備え

 地震本部地震調査委員長で東京大学の平田直(なおし)名誉教授(地震学)も、Sランクだけを見てそれ以外の場所は安心だと思ってはいけないと強く警鐘を鳴らす。

「顕著な活断層があるところは明らかに繰り返し地震があった場所なので、それを念頭に入れて対策を取ることは大切です。しかし、未調査の地域や活断層のない所で発生する地震も多く、特定の活断層だけを見て判断するのは防災上、極めてよくありません」

 平田名誉教授は、個別の活断層だけではなく、周囲の活断層も含め地域全体で見ていくことが大切だという。

 例えば、関東地域はSランクの三浦半島断層群の30年以内の発生確率は6~11%だが、区域で見ると17%、さらに関東全域で見れば50%になる。これは南海トラフ地震の発生確率(60%程度)と比べ決して低くない。地震本部は関東の他、中国、四国、九州の「地域評価」を行っていて同本部のホームページで確認できる。

「日本列島の成り立ちを考えれば、日本中どこで大地震が起きてもおかしくありません。活断層がないから安心と考えるのではなく、いつ地震が起きてもいいよう対策を取ることが大切。建物の耐震化を進め、家具の転倒防止をするなど、自分の命を守るための備えをしておくことが重要です」(平田名誉教授)

 備えても備えすぎるということはない。食料や水などの備蓄も大切だ。いつか必ず起きる大地震に備え、対策はできているか。あの日から間もなく12年。3月11日を前に、改めて見直したい。(編集部・野村昌二)

AERA 2023年3月6日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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