ギャル時代の湯浅さん(本人提供)
ギャル時代の湯浅さん(本人提供)

■依存症の教育が足りない刑務所

 逮捕後の拘置所暮らしの中で薬の服用量が減ると、思考が徐々にクリアになってきた。それは「クソみたいな」過去の自分と向き合うことでもあったという。

 最もショックを受けたのは、夫からの手紙だ。

《俺に保険金を掛けて死ねと言ったが、仮に言う通りにしていたとしてその金は何に使うつもりだったの?》
《妊娠したと言ってたけどあれは本当ですか?》

「夫の手紙の内容を、何ひとつ覚えていなかったんです。もう一人の知らない自分が手紙の中にいるような……。その他の話も、あれもこれも覚えていない。頭がさえていく中で、私は一体何をやってきたのかと急に自分が怖くなりました。こんな自分が、刑務所から出た後にまともに生きていくことができるのかという恐怖が襲ってきて…」

 拘置所には、薬物などの依存症を抱える累犯者が多かった。彼女たちに話を聞くと、育った環境など、自分と共通する点がたくさんあった。

 依存症に関する本を借りて読みあさり、自分の症状がどのようなものか自覚できるようになった。さらに、その後に移送された刑務所でも勉強を続ける中で、ふと疑問がわいた。

 刑務所の依存症に関する教育や指導が、足りなすぎるのではないか。

 刑務所内では対象者を限定し「薬物依存離脱指導」を行なっているが、十分ではないとの指摘はかねてあった。

「依存症とは何なのか。どこに相談し、どう行動すれば更生につなげられるのか。当事者だけではなく家族は何をすればいいのか。しっかり学ばずにただ服役して刑務所を出たら、また依存状態に戻ってしまうだけ。累犯者が多いのは、教育の機会が少な過ぎることが一つの理由ではないかと感じたんです。私の罪名は窃盗ですが、その根底には薬物依存がありました。そうした問題へのアプローチが一切ない刑務所の教育体制に大きな疑問を持ちました」

 38歳で出所し、ネイリストの資格を取った。仕事を始めると同時に、依存症者や家族の支援、情報発信に携わっていくことを決めた。

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「クソみたいな人生」もすべて出すと覚悟