球団史上初の2年連続日本一はかなわなかったが、リーグ連覇を飾ったヤクルト。その強さはセ・リーグの中で抜きんでていた。他球団のスコアラーはこう分析する。
「悔しいが、日本シリーズで勝てるセ・リーグのチームは現状でヤクルトだけでしょう。村上宗隆を筆頭に個々の選手たちが勝つための役割に徹し、長岡秀樹、内山壮真、丸山和郁と将来の中核を担う若手も順調に育っている。来年も優勝候補の最右翼であることは間違いない。他の球団はヤクルト包囲網を敷く必要があると思います」
盤石な戦力かと言うと、決してそうではない。2ケタ勝利を挙げた投手は2年連続でゼロ。昨年チームトップタイの9勝を挙げたプロ3年目右腕の奥川恭伸は、故障で長期離脱し、今季の登板は1試合のみ。3月29日の巨人戦で4回を投げて緊急降板すると、翌30日に上半身のコンディション不良で登録抹消された。その後はリハビリに励んだが、右肘の状態が思わしくなく実戦復帰を果たせないままシーズンを終えた。
左腕・高橋奎二もシーズン終盤に新型コロナウイルス感染で1カ月半離脱したのが響き8勝止まり。先発陣の防御率3.84はリーグワーストだった。それでも白星を重ね続けられたのは、救援陣の奮闘が大きい。清水昇、田口麗斗、木澤尚文らがそれぞれの持ち場できっちり役割を全うする。首脳陣はコンディション管理を徹底し、過度な負担を強いらせなかったことも忘れてはいけない。守護神・マクガフにつなぐ勝ちパターンがヤクルトの生命線だった。
リーズン連覇を飾ったことで、選手たちは自信にみなぎっている。黄金時代がしばらく続くように感じるが、心配なのが主将の山田哲人だ。4番を打つ村上が日本記録の56本塁打を樹立し、NPB史上最年少の22歳で三冠王に輝いたのとは対照的に、3番の山田は最後まで苦しんだ。今季は規定打席に到達した14年以降でワーストの打率.243。23本塁打、65打点も満足できる数字ではなく、140振はリーグワーストだった。26歳までに前人未到のトリプルスリーを3度達成したが、2019年以降は打率.280に届いていないシーズンが続いている。