朝鮮半島もベトナムも漢字文化圏
漢字に代表される中国文化の影響を強く受けた地域を漢字文化圏と呼ぶことがあり、朝鮮半島、ベトナム、日本を含んでいる。現在、朝鮮半島はハングルを、ベトナムはローマ字を使っているのでピンとこないが、朝鮮語、ベトナム語、日本語の辞書に掲載されている語彙の6割程度が漢語に起源を持つ単語であるといわれている。
日本人は中国のレストランのメニューを判じることができたり、中国人と漢字で筆談ができたりする。「economy」の訳語として日本で作られた言葉「経済」や「philosophy」の訳語である「哲学」など日本語で作られた言葉が中国語に逆に輸出されたものもある。韓国のドラマが大流行だが、セリフを聞いていると「日本語の単語が聞こえた」と思うことがよくある。
基本文型は中国語、ベトナム語がSVOで、朝鮮語、日本語がSOV。翻訳は、韓日は簡単で、中日、越日は文法の違いの分だけ難しい。とはいっても、漢字のお陰で、中国語、朝鮮語、ベトナム語、日本語の4言語は6割の語彙が重なるので訳語選択が少なくて済むことから高精度な自動翻訳が構築でき、アジアで連携することを考えたときに日本は世界の中でも良いポジションがとれると考えて間違いない。
○隅田英一郎 (すみた・えいいちろう)/国立研究開発法人情報通信研究機構フェロー。一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会会長
注1)https://www.ethnologue.comは、聖書の多言語化の基盤として整備されてきた(聖書は、2019年の時点で698の言語に翻訳されている)。Ethnologueには言語に関するさまざまな観点での最新情報が集められている。例えば、コロナの感染拡大に対応して、各言語での"wash your hands"を集めた新しいページSpread the word, not the virus が公開されていて"wash your hands"のアイヌ語は「takehuraye yan」とある。
注2)https://www.ethnologue.com/guides/ethnologue200