そもそも、サウナ歴はすでに長かった。大阪で家族みんなサウナ好きという環境に育った。とくにサウナが好きだった祖父に連れられ、5歳にして健康ランドでサウナデビュー。思い出の中のサウナは大好きな祖父とともに過ごすキラキラした場所だった。
「小学生のころは放課後、カバンにタオルだけをつめて、お小遣いを握りしめて近所の銭湯に行くのが何より楽しくて。400~500円という銭湯価格も子どもながらにハッピーでした」
銭湯やサウナはなじみのおじいちゃんたちとなんてことのない会話を楽しむ場所。そして、一人になって考え事もできるお気に入りの場所だったという。
「サウナ後に飲むスポーツ飲料と、さっぱりしたからだで自転車をこぎながら肌に当たる風がまた心地よかった。いまでいう外気浴ですよね。びしょびしょのタオルをカバンに入れたままにして、親によく怒られていました」
■サウナによる「切り替え」がビジネスにも効く
社会人になり、そのサウナがビジネスの場面でのさまざまな課題を健康的に解決する糸口になった。
20代の最後に一級建築士の資格を取ることになり、「試験合格に必要な年間700時間ぐらいの勉強時間を、仕事をしながら確保するのは大変だな」、そんなことをサウナに入りながら考えていた。川田さんはついに、サウナでうまくスイッチを切り替えながら仕事と勉強を両立する方法を編み出す。
「朝から集中して仕事を終えるとぐったりしてしまいついつい勉強に手がつかない。その原因はモードを切り替えることができないから。そこで夜には会社からスパ施設に訪問しサウナでリセット、というサイクルを作ってみたら、サウナを出てから、また新たな一日が始まる感覚になった。デジタルデトックスと脳のリフレッシュが効果的でした。そこから勉強の時間を作ってみよう、と思い立ったわけです」
サウナによる切り替えが功を奏し、仕事と勉強をうまく両立させて猛勉強した結果、無事に一級建築士の資格を取得。ほぼ同時に、社内で当時最年少の29歳で課長に昇進した。だが今度はマネジメントの壁にぶち当たってしまう。
「それまでは、ただがむしゃらに自分のコンディションを整えながら成果を出すことに集中していた人間でした。それが今度は、自分だけではなくて他のメンバーのモチベーションをマネジメントしながらチームで成果を上げていくという新たなテーマを与えられた。正直、戸惑いましたね」