主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の直前に、インドネシア・バリ島で会談したバイデン米大統領と中国の習近平(シーチンピン)国家主席。両国が抱える最大の懸案は、言わずと知れた台湾問題だが、今回の会談でも議論は平行線をたどったとされる。
中国と台湾の関係は、日本にとっても安全保障上のリスクとなっているが、事実上、二つの政府が並び立つような状況はなぜ生まれたのか。いまさら聞けない中国と台湾の関係を、『ざっくりわかる 8コマ地政学』から、マンガを交えて解説したい。
ことの始まりは、20世紀前半の中国における国民党・共産党の内戦だ。共産党が勝利して中華人民共和国を建国し、国民党は台湾に逃れる。共産党政府は中国本土を掌握し、台湾の併呑も時間の問題と思われたのだが、1950年代の2度にわたる台湾海峡危機では、アメリカが艦隊を派遣したことで中国は台湾侵攻を断念する。台湾は、日本や韓国と並び、ソ連・中国の社会主義勢力を封じ込める「戦略的拠点」とみなされたのだ。
1970年代、台湾は大きな危機を迎える。1971年、中国(中華人民共和国)が国連に加盟したのと入れ替わるように、台湾(中華民国)は国連から脱退。日本を含む国際社会の多くは、中華人民共和国を正当な中国の「国家」と認め、台湾を「地域」とした。つまり、アメリカや日本など西側諸国が中国に接近し、中国を正統な政府として承認するようになって、逆に台湾は、国際的に孤立したのだ。
この危機に、台湾は経済的な地位を高めることで対応しようと、産業の育成に注力。工業化を果たす。国民党一党独裁だった政治体制に対しても、民主化の要求が高まっていく。1988年に総統に就任した李登輝は、民主化を推進する一方で「台湾の自立」を意識した外交を展開。「大陸から自立した台湾人」というアイデンティティーも強まった。
台湾を主権国家として承認している国は14カ国。オリンピックなどの国際スポーツ大会で台湾が「チャイニーズ・タイペイ(中華台北)」と名乗っているのは、「一つの中国」をめぐって中国と台湾が議論した末の、苦肉の策なのだ。