だが、大会が始まればそこはライバル。第一戦でスペインに大敗してしまったコスタリカは後がない。「ボロ負けしたからこそ気合が違う。日本には2対1か3対1で絶対に勝つ」とロメロさんは言い切る。

 一方の彩夏さんは、「いやいやいや、絶好調の日本が負けるはずはありません。1点くらいなら許してあげてもいいけど」とジャイアントキリングを果たした日本に自信満々。やりとりは日に日にヒートアップし、「けんかになりそうです」と彩夏さんは笑う。

 出入国在留管理庁の「在留外国人統計」によると、21年12月時点で日本にいるコスタリカ人はわずか203人。この国で、コスタリカの人と会ったことがある人は少ないだろう。どんな国なのか。

 彩夏さんがコスタリカに住んで感じたのは、ラテンの陽気さだけではなかった。驚いたのは、みんなが家族をとても大切にする姿だ。労働者は仕事を切り上げると、まっすぐに家に帰る。日本のサラリーマンのように飲んだくれて帰って、かあちゃんに怒られる人はいないそう。お店側もまだ夕方なのに、「もう閉店して家に帰るから、早く出て行って」などとお客さんにうながすことがあるそうだ。

 一方で、電車が所定の時間に来ないなど、行動が予定通りにならないストレスはある。

「ただ、それを仕方がないことだとと受け止める、ストレスに負けない心を持っているとも感じました。人生には波があると、理解しているのだと」(彩夏さん)

 父の仕事の関係で16歳のときに来日した経験があるロメロさん。その時、日本に憧れを持った。

「ルールを自然に守ることができたり、何事もていねいに取り組む日本人は素晴らしいと思います」(ロメロさん)

 技術力の高さにも、尊敬の念を抱いている。

 コスタリカの人の温かさが好きになった妻と、日本を愛する夫。27日は、自宅で友人たちも呼んで観戦する。夫婦と息子はそろってコスタリカのユニホームを来て応援する予定だが、「コスタリカが初戦に大敗しちゃったから、夫がみんなで着て応援しようって決めましたが、私の心は日本です」(彩夏さん)

 仲良し夫婦は一時休止。27日の夜はお互いの国の生き残りをかけた“バトル”が待っている。(AERA dot.編集部・國府田英之)

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