うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格した杉山奈津子さんも、今や小学生の男の子の母。日々子育てに奮闘する中でとり入れている心理テクニックや教育方法をお届けします。今回は「やる気がでる目標の設定法」についてです。杉山さん自身が心理カウンセラーとして学んできた学術的根拠も交えつつ語る『東大ママのラク&サボでも「できる子」になる育児法』も絶賛発売中です。ぜひご覧ください。
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ハーハード大学の社会心理学者であるエレン・ランガーが行った、モチベーションに関係する実験で、次のようなものがあります。
まず、被験者を二つのグループに分けました。そしてAのグループには、「ジャンピングジャックを50回するとしたら、何回目くらいで疲れると思うか」という質問をしました。ジャンピングジャックとはいったい何かというと、両手と両足を開いたり閉じたりしながらジャンプをする運動のことです。Aのグループでは、多くの人が「30回くらい」だと答えたそうです
もう一方のBのグループには、「ジャンピングジャックを70回するとしたら何回目ぐらいで疲れると思うか」という質問をしました。すると多くの人が、「50回くらい」と答えたのだそうです。
■ノルマが多いほうが疲れを感じにくい?
同じジャンピングジャックですが、する回数を多く設定したほうが、疲れずに「できる」と思う回数も多くなりました。
この結果から、「これくらいのことをやるべき」というゴールが設定されたとき、そこにたどり着くまでの苦しさには、気持ち的なものが多く関係してくるといえます。大体、人は目標の3分の2くらいで「疲れてくる」と感じる仕組みになっているのだと考えられています。
つまり、エクササイズのために「腕立て伏せを20回できるようになりたい」思ったならば、目標回数を20回ぴったりに決めるべきではないのです。気持ちの負担を減らしたいならば、腕立て伏せの目標設定回数をあえて高く、たとえば30回にしておきましょう。すると簡単に目標の20回を達成していた、ということも起こりえるのです。目標数にたどり着くまでの気持ちは、ゴールがどこにあるかによって、相対的に決まってくるようです。