野手では陽川尚将(阪神→西武)、正隨優弥(広島→楽天)、細川成也(DeNA→中日)の3人が面白い。陽川は毎年のようにブレイク候補として期待され、2018年には6本塁打、2020年には8本塁打を放っているが、大山悠輔や佐藤輝明の存在もあってなかなか一軍に定着できなかった選手である。来年で32歳とベテランと言われる年齢に差し掛かっているが、指名打者のあるパ・リーグ、それも思い切りの良い打者が活躍する土壌のある西武であればそのポテンシャルが開花することも期待できるだろう。
正隨、細川の2人も二軍では上位のホームランを放っているが、広島は中村健人、末包昇大、DeNAは蝦名達夫が加入したことで出場機会が限られていただけに、この移籍は大きなチャンスである。正隨の移籍先の楽天は右打者不足、細川の移籍先の中日は長打力不足とチームのニーズにもマッチしている。これまでの実績や現有戦力などを考えるとすぐにレギュラーといった感じではないが、キャンプ、オープン戦からアピールに成功すれば一軍定着の可能性もありそうだ。
一方で課題も見えたことは間違いない。メジャーの「ルール5ドラフト」で指名された選手は翌年アクティブ・ロースターと言われる26人枠に登録しておく必要があるが、今回行われたNPBの現役ドラフトではそのような制限はない。そのため、移籍した先でも変わらず二軍暮らしという可能性も否定できない。
また実力はありながらも出場機会に恵まれない選手を救済するというのが大きな狙いだが、第1回目ということで他球団の動向を探るためにか、二軍でもそれほど目立つ成績を残していない中堅選手が含まれていたことも確かである。今後も同じ形式で行われるのであれば、本来であればそれまでに自由契約にしていた選手を現役ドラフト用に残しておくということも考えられる。その選手が現役ドラフトによって移籍して活躍する可能性ももちろんあるが、本来の趣旨からは少しずれたものになると言えそうだ。