「セリフを話す感覚が、いつもと違う」
そうなのです。診察をすると、普通の人では問題にならないレベルですが、確かに患者さんが言う部分のかみ合わせにわずかなズレがありました。「さすがプロだな」と感心しました。
その部分をコンポジットレジンで足したり、減らしたりしながら、ちょうどいい高さになるように調整していきました。実際にセリフを読みながら、確認してもらいました。
吹奏楽器の演奏者で、「音がうまく出ない」と受診された患者さんもいます。
「下の前歯が欠けたら空気の流れが変わって、音がいつものように出なくなった」
と言うのです。
口の中を見ると、確かに、前歯の一部が欠けています。ご本人もいつ欠けたのか自覚がないということで、「寝ているときの歯ぎしりが原因かもしれない」という話になりました。欠けた部分をコンポジットレジンで足すと、患者さんは持参したマウスピースをくわえて、「フーッ」
「まだ、元通りにはなっていませんね。もう少し調整してください」
と言われました。
「足したレジンが高すぎる」
というのです。そこで紙やすりのような歯科材料を使って、歯の表面をなでては、マウスピースを吹く、再度、なでては吹く、という作業をしながら、調整しました。
歯の角を丸く整えるなどの調整もしながら、気づけば1時間。
それでも「まだ、感覚が違う」ということで、2日がかりで調整をしました。最後は楽器を持参され、診察室で音を確認。「これでOK」と治療は終了しました。この患者さんは最近もテレビでときどき、拝見しますが、とても素敵な演奏をします。
「私の診療が少しは役にたっているのかな?」
などとうれしく思っています。
口の中の問題は歯科が専門。このように、滑舌や楽器の音などの問題で、気になることがあったら、ぜひ、歯科を受診してみてください。
相談内容によっては、「当院では難しい」と言われるかもしれませんが、積極的に取り組んでいる歯科医院は必ずあります。お口のよろず相談ができる、歯科をぜひ、上手に使ってください。