冬はおなかを壊しやすい。冷え、ノロウイルスなどの食中毒、受験などの緊張・ストレスまで、原因はさまざま。多くは一時的な症状だが、慢性化すると生活の質(QOL)が脅かされる。身近な下痢の原因と対処法を解説する。
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わたしたちは毎日、飲食物から約2リットルの水分を摂取している。このほか消化管からは、唾液や胃液、胆汁、膵液などの消化液が分泌されていて、合わせると、1日あたり約9リットルになる。うち99%は小腸や大腸で吸収される。このバランスが何らかの原因で乱れ、便の水分量が不足すれば便秘に、過剰だと下痢になる。
横浜市立大学医学部医学教育学教授で同大学病院消化器内科の稲森正彦医師はこう話す。
「身近なものに『食中毒』の下痢があります。感染性下痢の一種で、病原菌をからだの外に排除しようと、腸から大量の水分が出るために下痢が起こるのです」
ノロウイルスの食中毒は冬場に特に増える。
「ノロウイルスは食品だけでなく、手指などを介して、経口で感染するのが特徴です。原因物質ごとに、家庭でできる対策を厚生労働省がホームページで紹介しているので、参考にするといいでしょう」(稲森医師)
近年注目の「腸脳相関」について、星ケ丘マタニティ病院内科部長で心療内科医の金子宏医師が、次のように解説する。
「『腸脳相関』とは、脳の状態が腸に影響を及ぼし、腸の状態も脳に影響を及ぼすという意味です。実際、腸管は不安や緊張によって動きやすいこともわかっていて、ストレスの影響で容易に下痢は起こります。私の診療経験では、あがり症の人やストレスをためこみやすい人、怒りっぽい人などが下痢になりやすい傾向にあります」
小さいころに「おなかが弱い」と言われてきた人は、大人になってもしばしば下痢を訴えることがあるという。
「実際はそうでなくても、思い込むことがストレスになっていることがあるのです」(金子医師)