「プーチンには絶対、降伏しない」。前線から帰郷したウクライナ兵らがこう口をそろえた。しかし、ロシアはクリスマス休暇中も、ウクライナの各都市にミサイル攻撃を加える。電気や水が止まったりする中、ウクライナ人たちは冬をどう乗り越えるのか――。現地からリポートする。(岡野直=ウクライナ西部・リビウ)
【写真】爆発の瞬間をとらえた!ウクライナ軍の作戦のポイントとは
* * *
ウクライナの「西の都」、リビウ市の東方カトリック教会。昨年のクリスマス、ミサで神父は「プーチンの罪」という言葉を何度か繰り返した。男性信者たちが目に涙を浮かべ、ハンカチで顔を押さえている。
大勢の男性が涙ぐむ光景を当地で初めて見た。教会の出口で、祈りを終えた主婦イヴァンカさん(38)に尋ねると、「静かな生活を送りたいけれど、それができないからです。今日は神が降りてきてくれている日なのです」と答えた。営業職の男性(25)も、目に涙を浮かべながら、「自分は真剣な信者ではないが、今年は特別なクリスマス。ここで平穏を感じることができました」と語った。
教会の前の路上で、軍服を着た衛生兵(52)が立ったまま、十字を切った。筆者に、やけどで赤くひきつれた左手を見せながら、「前線でけがをした。治ったら、戻ります」。そして、「絶対プーチンには降伏しません」と3度繰り返した。「たくさんの死を見てきたからです」
「何を祈ったのですか」と尋ねると、一言、「ムィル(平和)」と答えた。
戦意を新たにするのは教会だけではない。その日の夜、リビウ駅前の小さな食堂で私が夕食を取っていると、ウクライナの中年男性3人組が入ってきた。その1人、ゲーニックさん(47)は「砲兵だ」と名乗った。戦傷休暇で30日間、故郷のリビウに戻り、治療を受けたという。彼も前線に戻るところで、「(東部の激戦地)ドンバスへ行く」という。
職業を尋ねると、私の席の隣に座り、「靴を作る職人だった。2月24日にテレビで(ロシア軍の本格侵攻を)見て、これはいけないと思った。すぐ志願して、27日には軍に入ったんだ」