「ようやく両親も私も落ち着きはじめました」と新年のあいさつと共に電話をくれたときは、まるで自分のことのようにホッとしたことを覚えています。

 コロナパンデミックが起きたことによって私が痛感したことの一つが、近いようでとても遠いことを痛感させられた諸外国との距離です。コロナ流行以降、中国への帰国が難しくなり親にも会えず、いつ帰国できるか見当すらつかない状況で2年以上過ごしていた親想いの彼女を間近でみていて、それはとても気の毒でした。

 本来なら飛行機に乗りさえすれば数時間で会うことが可能な両親に、元気であっても会うことができなくなっただけでなく、日本にいても感染対策により人と会う機会が極端に減ってしまったことも相まってだったと思います。彼女は精神的に次第に追い詰められていき、食欲は減退し、みるみるうちに笑顔はなくなりやせていきました。

 中国での入国時の隔離期間が短くなり、一時的にリモートでの勤務も許可されたことから「帰国のための飛行機のチケットをやっと購入できました」と彼女から報告が来た時の彼女の嬉しそうな様子は、今でも印象に残っています。

 日本では、今年の春には新型コロナウイルス感染症の扱いを現在の「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」から、季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げる検討に入ったことが昨年末に報じられています。今年は中国だけでなく、日本もコロナ対策やコロナとつきあっていく生活様式に関して大きな転換期を迎えそうです。

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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