この合計金額を国会議員(衆議員465人・参議員245人)の数で割ると、一人当たりおよそ4200万円の費用がかかっている計算になる。しっかりと仕事をして、成果も出してくれていれば、国民も納得するところもあるだろうが、現状では議員特権への不満が噴出しているところだ。
尾藤さんはこう指摘する。
「イギリスやアメリカでは経費は実費精算になっており、その使途は公開されています。他方で日本は何に使っているのかもわからず、定額が支給されつづける。働いた分だけお金が支払われる仕組みに変えたほうがいい。海外の状況を見ると、給与のほうはもっと削っても政治家の質は保てると思います。特権の削減や制度の見直しをすれば、数十億円は捻出できるはず。国民に増税のお願いをするのであれば、まずは自分たちの襟を正さなければ、国民は納得できない」
ただ、特権は削減すればするほどいいという問題でもない。駒澤大の大山礼子教授(政治制度)は「普通の国民が国会議員になるためにはある程度の高い報酬は必要だ」と指摘する。給与が高いといっても、任期は衆院で最長4年間、参院では6年間だ。再選すればいいが、その保証はなく、不安定な仕事とされる。落選後も1、2年は生活できる程度の報酬はあっていいと考える。大山教授はこう語る。
「議員の歳費(給与)は確かに高いので削減してもいいと思うが、年間2千万円はあっていいのではないか。そのくらい保障しないと、お金持ちや年金生活者など生活に困らないような人しか立候補しなくなるという危惧があります」
調査研究広報滞在費や秘書給与手当、格安の議員宿舎なども国会議員が適切な政治活動をする上で重要だという考えだ。削りすぎれば、賄賂など不正の温床になりかねないということだが、やはり改善点も多いという。
「経費についてはしっかりと国が払うべきですが、調査研究広報滞在費は領収書の提出・公開を義務とし、事後精算にするべきです。適切に使われていることがわかればいい。費用が増える議員もいるでしょうが、総額では減る可能性があります。秘書手当は配偶者の雇用が禁止されているだけで近親者は可能となっているのも疑問のあるところです。お手盛りな状況が続いているから、『待遇を削れ』という乱暴な議論が出てくるのだと思います」(大山教授)
岸田自民党は、国民が納得できる状況をつくることはできるのか。
(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)