「それが彼のスタイルです。バイデン大統領は特にもっとも親近感を覚える人々と話すとき、触りがちなんです。触られるということは名誉なことなんだと私は思います」(ナヴァロさん)
さらに、日本から批判的な見解が出てきたことについては、日米の文化的な違いを指摘する。
「日本はハイ・コンテクスト(言葉以外に重きを置く)な社会なので、バイデン大統領の所作は無礼、もしくは許しがたいように見えたかもしれません。しかし、大統領は、日本の社会のようなニュアンスを日々経験できない社会、つまり、ロー・コンテクスト(言葉に重きを置く)社会の人間なんです」
岸田首相側に課題があったという指摘もある。
政治家の振る舞いや装いに詳しい、国際ボディランゲージ協会の安積(あさか)陽子代表理事は「岸田首相の立ち振る舞いでぎこちないところが見受けられた」と話す。
政治家の場合、ボディータッチをすることは頻繁にあり、それは自分がイニシアチブ(主導権)をとっている印象を周りに与えるためだという。首脳会談などで二の腕付近や背中に手を添えて、誘導したりするのはよく見る光景だ。これらの部分は触れても失礼ではないとされるという。安積代表理事はこう説明する。
「首脳レベルであれば必ずどう見せるかを考えて、戦略的に会談に臨みます。ボディータッチで主導権を握っている印象を与えようとしますが、相手もやり返すのが基本です。フランスのマクロン大統領やカナダのトルドー首相はバイデン大統領と会談した際、そのことを理解しており、やり返していました。一方で、岸田首相は触られっ放しという印象です」
問題となっているバイデン大統領が岸田首相の肩に手を置いたことはどう見たか。
「肩の上に手を置くという行為は、目下の人が目上の人にはやらないものです。そのため、バイデン大統領が手を置けば強い主導権を取ろうとしているように見えてしまう。ただ、バイデン大統領がしきりに岸田首相の体や背中を触っているのを見ると、肩に手を置いて親近感を演出したかったのでしょう。このとき岸田首相もボディータッチで返せば対等に見えたのですが、笑っているだけだったので対等ではないように見えてしまいました」(安積代表理事)