※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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日本人女性の10人に1人、月経がある女性では5人に1人は貧血があると言われている。貧血の有無は健康診断の血液検査などでわかるが、最近は健診結果だけではわからない「隠れ貧血」が注目されている。

【イラスト図解】「隠れ貧血」の主な症状はこちら!

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 いつも何となくからだがだるい、階段や坂道を上るとすぐに息切れがする、めまいや動悸、頭痛がある……こうした不調は、貧血の典型的な症状だ。

 貧血は、体内の血液量が減っているわけではなく、血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態を指す。

 血液検査の結果、ヘモグロビン値(血色素量)が成人男性の場合13g/dl未満、成人女性では12g/dl未満の場合、貧血と診断される。

 血液の成分には赤血球、白血球、血小板などがあるが、ヘモグロビンは赤血球の中にあり、酸素と結合して全身に酸素を運ぶ。冒頭に挙げた貧血の症状は、全身の酸素不足によって起こる。

 ヘモグロビン濃度が低下する原因にはさまざまなものがあるが、最も多いのが鉄欠乏性貧血だ。鉄はヘモグロビンの材料となるため、体内の鉄が不足すれば、ヘモグロビンが作られなくなる。

 体内の鉄は約65%がヘモグロビンの材料となり、約30%がフェリチンとして体内に貯蔵される。フェリチンはたんぱく質の一種で、鉄と結合することで鉄を貯蔵する。このためフェリチン値は、体内に貯蔵されている鉄(貯蔵鉄)の指標となる。西崎クリニック院長の岡田定医師はこう話す。

「鉄が不足するとまず貯蔵鉄が使われ、それも枯渇するとヘモグロビン値が低下して貧血となります。つまり貯蔵鉄が少ない状態は鉄欠乏性貧血の前段階であり、『潜在性鉄欠乏症』などと言われます」

■貧血と隠れ貧血 症状は同じ

 近年、ヘモグロビン値が正常でも、フェリチン値が低い状態は「隠れ貧血」とも呼ばれ、注目されている。

 問題となるのは、隠れ貧血の状態でも貧血と同じような症状が出やすいことだ。鉄はヘモグロビンの材料になるだけではなく、筋肉に酸素を貯蔵する「ミオグロビン」の材料になるほか、精神を安定させる「セロトニン」や「ドーパミン」が合成される際の補酵素としての働きなどもあり、細胞内で多くの機能を担う。

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不安や不眠、うつ状態といった精神的な症状が出ることも