「隠れ貧血」の主な症状
「隠れ貧血」の主な症状

 また、女性は妊娠や出産、授乳期にも多くの鉄を失う。そこで鉄を十分に補えないまま月経が再開すると、閉経するまで体内の鉄のバランスは赤字のままということもありえる。

 さらに日本人は鉄分摂取量が推奨摂取量に満たない人が多いのが現状だ。

■放置すると貧血に移行する可能性も

 隠れ貧血は症状があっても見逃されやすい。倦怠感などは特有の症状ではなく、日常生活に大きな支障が出るわけでもないため、病的なものだとは認識しにくい。

 また、フェリチン値は貧血の診断の際には確認するが、健康診断の血液検査の項目には一般的には入っていない。

「女性の場合、ヘモグロビン値が12g/dl以上であれば貧血ではないということになりますが、この値はあくまでヘモグロビン値のみの基準値です。12g/dl以上であってもフェリチンが低下している可能性があります」(樋口医師)

 隠れ貧血を放置すると生活の質が下がるほか、貧血にまで進行する可能性が高くなる。貧血は全身の酸素不足を引き起こし、心臓などさまざまな臓器に影響を及ぼす。

「症状をはっきり自覚していない人でも、フェリチンが不足している人に鉄剤を処方すると『以前に比べて元気になりました』『頭がスッキリしました』という声をよく聞きます。月経がある世代の女性で症状がある人は、病院でフェリチン値を測定してもらい、学会で定められた基準値をもとに診断してもらうことをおすすめします」(岡田医師)

 一般のクリニックなどでは、フェリチン値は重視しない場合も多い。受診の際には「フェリチンを測定してほしい」ということを付け加えたい。

(文・中寺暁子)

※週刊朝日2023年2月3日号より