「女性は昔から不定愁訴を訴えることが多いのですが、原因の一つに鉄不足があるのではないかと考えています」
女性は月経で鉄を失うほか、妊娠や授乳期で鉄の需要が増す。
女性の鉄の推奨摂取量は、月経がある世代は1日10・5ミリグラムだが、20~40代の摂取量は6~7ミリグラム(令和元年国民健康・栄養調査)。妊娠中はさらに鉄を多く摂取する必要があり、フェリチン値50ng/ml以上が望ましいとされているが、それを満たす妊婦は約2割。鉄欠乏があると、妊娠中に貧血になり、低出生体重児や早産の可能性が高くなることも報告されている。
「欧米を中心とした50カ国以上では国民の鉄欠乏を国家的な問題と考え、小麦粉にあらかじめ鉄を添加するなどの対策をしています。日本ではそうした対策はありません」(岡田医師)
鉄欠乏性貧血の場合、治療は鉄剤の服用が基本となる。しかし貧血がなくても、フェリチン値が低い人(15ng/ml未満)は、鉄剤を使用することで全身倦怠感のほか、不安などの精神症状も改善するといった報告がある。
「隠れ貧血の人に鉄剤を処方すると以前と比べて『疲れにくくなった』『頭がすっきりした』という人が多くいます。隠れ貧血を改善するには、少なくとも3カ月間、貧血がある場合は貯蔵鉄を増やすまで半年間服用する必要があります」(同)
代表的な鉄剤「クエン酸第一鉄ナトリウム錠(商品名フェロミア錠50ミリグラム)」は、悪心、嘔吐、腹痛など消化器症状の副作用があり、継続できない人も少なくない。2021年からは、フェロミアに比べて消化器症状が軽いといわれている薬も使用できるようになった。
「服用量は少なくなりますが、顆粒タイプの『フェロミア顆粒』を20ミリグラムに減量、もしくは小児用シロップの『溶性ピロリン酸第二鉄(商品名インクレミン)』で、副作用が軽減されるので、錠剤を継続できない人にはおすすめです。こうした対策をすればほとんどの人が鉄剤を継続できます」(同)