ただし、貧血がない場合は、鉄剤は保険適用となっていないので注意が必要だ。
■「ヘム鉄」の意識的な摂取を
市販のサプリメントを使用する方法もある。フェロミア錠の場合、1日1錠で50ミリグラムの鉄を摂取できるが、サプリメントは、多いものでも1日10ミリグラム程度。それでも隠れ貧血の段階であれば毎日継続すれば効果は期待できる。
食事から鉄を摂取することも重要だ。食事からの鉄の摂取が不十分だと、鉄剤を中止すれば再び鉄不足になる。獨協医科大学埼玉医療センター輸血部部長の樋口敬和医師はこう話す。
「隠れ貧血の段階であれば、食事から積極的に鉄を摂取することで、フェリチン値が改善する可能性もあります」
鉄には肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、大豆、海藻類、野菜、穀物などに含まれる「非ヘム鉄」がある。両者は吸収率に大きな違いがあり、ヘム鉄は10~40%、非ヘム鉄は1~8%だ。しかし日本人の食事中の主な鉄の供給源は非ヘム鉄であることが多い。
「ほうれん草やひじきは吸収率が低く、鉄を摂取しようとすると大量に食べなければなりません。鉄の摂取を意識するなら、ヘム鉄を多く含むレバーや赤身のお肉などが効果的です」(樋口医師)
女性の鉄不足は、閉経すると解消されるが、高齢になると再び不足する傾向がある。胃酸の分泌が低下して鉄を吸収しにくくなることが一因だ。フェリチン値に加えて、ヘモグロビン値も低い場合は、鉄欠乏性貧血で、何らかの病気が原因になっている可能性もある。
「閉経後の女性や男性で鉄欠乏性貧血がある場合は、潰瘍やポリープ、がんなどによる消化管からの出血の可能性もあるので受診して検査を受けることが大事です」(同)
(文・中寺暁子)
※週刊朝日2023年2月10日号より