しかも、切除が成功しても5年で7割程度の人に再発がみられるのです。
「術後の肝不全が回避できても、再発したときに治療の選択肢が狭まってしまうこともあります。手術前には『肝機能を考えて、肝臓の何%を残すべきなのか』を徹底的に検討し、必要に応じて残る肝臓を増やすための処置をすることもあります」
ほとんどの臓器は切除したらその臓器は失われてしまいますが、肝臓は切除したあとに残された肝細胞が分裂して再生するのです。
「肝がんになる肝臓は再生能力が低下していることもありますが、手術前にあらかじめ再生させる方法もあります。このように、『再発した場合にさらなる治療が可能かどうか』を視野に入れて、治療方法を組み立てることが大切なのです」
■肝がんを治せるのは手術だけじゃない。針を刺して焼き固める治療も
治療の選択肢が多いのも肝がんの特長です。
まず治療の選択肢にあがるのが手術です。手術は従来の開腹手術だけでなく、小さな傷ですむ腹腔鏡手術を選択できるケースも増えています。
手術以外の治療法に「アブレーション治療」があります。皮膚の上から電極針を刺し、がんをラジオ波やマイクロ波で焼き固める治療法。局所麻酔で治療でき、傷痕も1センチほどしか残らない。おなかを開ける手術はもちろん、腹腔鏡手術に比べても患者の負担は小さくてすむのがメリットです。手術と同様、根治性も期待できます。
「再発しても、肝機能に問題がない人であれば何度でも治療できます。定期的に検査すればがんが小さい段階で見つかるので、再発を繰り返しながら10年以上治療を続けている人も少なくありません」(土谷医師)
日本肝臓学会のガイドラインによると、アブレーション治療は「がんの大きさは3センチ以内、数は3個以下」の場合に推奨されています。
がんの数が多い場合には、塞栓治療(カテーテル治療)が選択肢となります。足の付け根からカテーテルを挿入し、がんに栄養を送っている動脈を人工的にふさぐ治療法。がんに送られる血流を減らして兵糧攻めにする方法ですが、正常な細胞には影響はありません。肝切除やアブレーション治療に比べると根治性は劣るものの、がんが大きい場合や四つ以上ある場合に有効と考えられています。