97年7月16日のヤクルト戦で1軍デビューも、リリーフ7試合で防御率11.74と打ち込まれた。制球に難があるのに、際どいコースを狙ってカウントを悪くして、苦しくなって真ん中に投げて打たれるの繰り返しだった。
ところが、8月30日の広島戦でプロ初先発を任せられると、低めにボールを集める別人のような快投で、4回まで被安打1の無失点。7回に先頭の金本知憲に一発を浴びたところで交代したが、6回4安打3失点でうれしいプロ初勝利を挙げた。球団の新人では、66年の堀内恒夫以来の初先発初勝利。お立ち台に上がった小野は「両親にはずっと迷惑をかけてましたから……」と涙ぐんだ。
長嶋監督も「ローテーションの一角を担えるものを持っている」と期待したが、同年は1勝止まり。翌98年もイースタンで1試合20奪三振の新記録を達成したが、1軍では2勝7敗と大きく負け越した。
その後も2軍では最多勝や最優秀防御率を記録したのに、1軍の殻を打ち破れず、フォームをサイドに変えても結果は出なかった。
そして、02年オフに近鉄移籍も、最後はイップスに苦しみ、1年で戦力外になった。
このほか、99年の2位・谷浩弥(田村コピー)、00年の2位・上野裕平(立大)、04年の2巡目・三木均(八戸大)も即戦力と期待されながら、花を咲かせられずに終わっている。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。