DC-9の改造機を使用して行われる微小重力環境訓練。急激に上昇し、急激に降下する弾道飛行によって、約20~25秒の無重量状態を生み出し、その機内で無重量環境を体験する
DC-9の改造機を使用して行われる微小重力環境訓練。急激に上昇し、急激に降下する弾道飛行によって、約20~25秒の無重量状態を生み出し、その機内で無重量環境を体験する
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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が行った13年ぶりとなる宇宙飛行士候補者の選抜試験で、米田あゆさん(28)と諏訪 理さん(46)が選出された。倍率は過去最高とされる2000倍超。米田さんは日本赤十字社医療センターの外科医。諏訪さんは世界銀行の上級防災専門官として、アフリカの防災や気候変動対策を担当している。

【チャート】宇宙飛行士候補者・宇宙飛行士の訓練の流れ

 2人が受けた選抜試験の内容は、2022年11月17日に公開した記事「JAXA・宇宙飛行士『選抜試験』の内容とは? 募集要項には月での活動が明記されていた」に詳しい。宇宙飛行士候補者となった2人は、正式な任命までにどんな訓練を受けることになるのか。『夢の仕事場 動画と図解でよくわかる 宇宙飛行士』から紹介したい。

 まずは、JAXAの筑波宇宙センターで基礎訓練が始まる。その後、場所をアメリカへと移して、さらに高度なトレーニングを受けることになる。

宇宙飛行士候補者・宇宙飛行士の訓練の流れ。約3年に及ぶ訓練が行われることになる
宇宙飛行士候補者・宇宙飛行士の訓練の流れ。約3年に及ぶ訓練が行われることになる

 映画などで「こちらヒューストン」などと交信するシーンを見たことがあるだろう。ヒューストンとはテキサス州の地名。ここにはNASAの主要施設のひとつ、ジョンソン宇宙センターがある。アメリカから打ち上げられた宇宙船や、国際宇宙ステーション(ISS)の管制を行っているが、宇宙飛行士の訓練施設の役割も果たす。

 NASAでは宇宙飛行士候補者を「アスキャン」(ASCAN)と呼ぶ。これは「Astronaut Candidates」の略で、「宇宙飛行士候補者」を意味する。彼らが受ける基礎訓練のこともアスキャンと呼ばれ、ISS計画に参画する各国の候補者たちもヒューストンに集まり、アスキャンに加わる。

飛行操縦トレーニングに使用される「T-38ジェット練習機」。訓練によって宇宙飛行士に必要なマルチタスク能力、英語による無線コミュニケーション能力、ストレス環境下での状況認識力や判断力などを向上させる
飛行操縦トレーニングに使用される「T-38ジェット練習機」。訓練によって宇宙飛行士に必要なマルチタスク能力、英語による無線コミュニケーション能力、ストレス環境下での状況認識力や判断力などを向上させる

 ジョンソン宇宙センターには、さまざまな訓練施設があって、なかでも大規模なのは「ニュートラル・ボイアンシー・ラボ」(NBL)という巨大なプール。水中に実物大のISS(国際宇宙ステーション)モジュールなどが再現されていて、宇宙服を着て水に入り、無重量に近い状態で船外活動の訓練を行う。ほかにも、野外でのサバイバル訓練をはじめ、多くの訓練プログラムが用意されている。

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正式に宇宙飛行士に任命されても訓練は続く