海中を泳ぐアクアノート(潜水技術者)はまるで船外活動をする宇宙飛行士のよう。宇宙と海は共通点がとても多いのだ
海中を泳ぐアクアノート(潜水技術者)はまるで船外活動をする宇宙飛行士のよう。宇宙と海は共通点がとても多いのだ

  筑波とヒューストンでの基礎訓練を無事終えると、候補者は正式な宇宙飛行士に任命される。しかし、それでもまだ宇宙へは行けない。

 次にアドバンスト(上級)と呼ばれる、ISSの各モジュールや宇宙船、ロボットアームの操作に関する、より高度で実践的な訓練を受ける。それらを完全にマスターするために、機器を開発した国に訪れ、その開発者の指導のもと訓練を受けることになる。

 例えば、NASAの上級訓練の一つに、ニーモ(NEEMO)という極限環境ミッションがある。水深19メートルの場所にある海底研究所「アクエリアス」に1~ 3週間ほど滞在しながら、さまざまな訓練を受けるのだ。訓練を受けるメンバーは宇宙飛行士ではなく、アクアノート(潜水技術者)と呼ばれる。

 海中は宇宙に近い。どちらの環境でも体が浮遊し、宇宙では気圧を、水中では水圧を常に管理する必要がある。生活する場所は閉鎖的で、そこで作業をするには綿密な計画と、たくさんの機器が必要になる。つまり、アクエリアスで長期間を過ごす経験は、宇宙ステーションだけでなく、月や火星に行くためにも役立つのだ。ニーモでは水中でシャベルを使う練習をするが、これは宇宙飛行士が月や火星で土壌サンプルを採取するための訓練にもなるという。

 一連の訓練が完了すると、アメリカの宇宙船を運用するためのミッション・スペシャリストに任命され、乗る宇宙船が決定(アサイン)されるのを待つことになる。その間も、習得した技術を維持・向上させるためにリフレッシャー訓練を続け、最終的なアサインを受けると、打ち上げの3カ月ほど前からはさらに具体的な訓練を受けることになる。

 米田さん、諏訪さんが受けたJAXA選抜の募集要項には、その業務内容として、月の宇宙ステーション「ゲートウェイ」への滞在や、月面探査などが明記されていた。1月には日米首脳による月面探査に関する連携も確認されたばかり。すでに動きはじめた「アルテミス計画」における日本人宇宙飛行士の活躍に、世界の注目が集まっている。

(構成 生活・文化編集部 塩澤 巧/写真 NASA提供)

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