AIの生成画像は手塚治虫のクオリティーには届かない。人の手を加えて、精度を上げたのが右側のキャラクターデザイン(撮影/写真部・小山幸佑)
AIの生成画像は手塚治虫のクオリティーには届かない。人の手を加えて、精度を上げたのが右側のキャラクターデザイン(撮影/写真部・小山幸佑)
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主人公・ぱいどんを描くロボットアーム。AIが描き上げたキャラクターをもとに、下絵の一部も担った(撮影/澤田憲)
主人公・ぱいどんを描くロボットアーム。AIが描き上げたキャラクターをもとに、下絵の一部も担った(撮影/澤田憲)

 漫画の神様・手塚治虫が逝去してから31年、AIの技術によって誕生した新作「ぱいどん」。だがAIによる漫画の生成は「漫画家」と呼べるのか、「モーニング」編集長を悩ませ、掲載を躊躇させた。AERA2020年3月16日号は、「メガヒットの条件」を特集。編集長による掲載決断の背景に迫った。

【写真】主人公・ぱいどんを描くロボットアーム

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 誰もが見慣れた手塚治虫のタッチ。なのに今まで誰も見たことのない顔の青年が、漫画雑誌「モーニング」の表紙に現れた。

 名前は「ぱいどん」。

 漫画史に残る数多の名作を生みだした手塚治虫がこの世を去って31年が経つが、この作品は決して未発表だったものではない。昨年10月、キオクシア(旧東芝メモリ)と手塚プロダクションの共同プロジェクト「TEZUKA2020」が発足し、「手塚治虫が生きていたら」を起点にAI(人工知能)で新作をつくる挑戦が始まった。

 まず、『ブラック・ジャック』や『三つ目がとおる』など1970年代の作品を中心に、長編65作品、短編131作品の物語や設定を分析、人の手でテキスト化し、AIに学習させた。それらデータを組み合わせて物語のプロットを生成した。一方、読み込ませたキャラクター画像は6千枚以上。そこから自動生成されたキャラクターやシナリオをブラッシュアップし、生まれたのが「ぱいどん」だった。

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