だが、キャラクターとプロットを考えるだけの存在は果たして「漫画家」と呼べるのか。モーニングの三浦敏宏編集長(49)は、そう疑問を感じ、一度掲載を断ったという。その心を動かしたのは、AIのエキスパートとしてプロジェクトに参加する慶應義塾大学の栗原聡教授の苦悩だった。三浦さんが振り返る。

「やればやるほどAIが漫画を作ることは難しく、人間がものを作るすごさを思い知るばかりだ、とおっしゃっていたのです」

 ふと思った。似ている。アトムの生みの親、天馬博士がぶつかった「ロボットは人間にはなれないのか」という悩みに──。

 三浦さんはそこに面白さを感じ、AI漫画家のデビューの場を用意することを決めた。AIが担ったのは漫画制作のごく一部。それでも、技術が発展すれば、いつか本物のAI漫画家が誕生する日がくるのではないか。

「AIは人間と違っていくらでも脳みそに情報を入れることができる。つまり、インプットを追求すれば同じ個性の作家が生まれることになる。言い換えれば、何を覚えさせないかがAI作家の個性になると考えています」

 AIがヒットをつくる時代のスタート地点に立ったと言えよう。(編集部・福井しほ)

AERA 2020年3月16日号より抜粋

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