アイドルグループNEWSのメンバーとして活躍しながら、作家としても高い評価を受ける。感情や情景を切り取り、文章として紡ぐとき、加藤シゲアキさんは何を思い、何を見ているのだろうか。
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最新刊『できることならスティードで』は、加藤シゲアキさん(32)が文芸誌「小説トリッパー」に3年にわたって連載した“旅”をテーマにしたエッセイ集だ。読み進むうちに加藤さんの見てきた景色が目の前に広がり、思考の深いところに一緒に潜り込んだかのような気分になる。これまで5冊の小説を出版しているが、エッセイを出すのは今回が初めてだ。
──小説とエッセイでは、向き合い方は違いましたか。
多少は違ったかもしれないですね。最初は“旅”というテーマだけを決めて、色々な解釈をしていこうと考えていました。その場所に根づいているもの一つ一つに目を向けると、そこで暮らす人の人間性や国民性が浮かび上がって、そこで“土地の人柄”のようなものが醸(かも)されていると感じるんです。その場所に「行く」というプロセスを含めて、やはり旅は面白いですよね。ただ、3カ月に1回の連載でしたから、そのたびに旅をするのは難しい。これまでの旅を振り返りながら書くことが多かったので、自然と自分に向き合うことになりました。それで、気づいたら自分の内側を書いていて、いま読み返すと、「赤裸々だな」と思うこともありますが、無理して書いたという感覚はないですね。
──一瞬一瞬の感情を丁寧に言葉にされていますが、普段からメモを取るなどして、記録しているのですか。
メモを取ることはあまりないですね。書き始める前に、情景や感情など、自分が書きたいことを箇条書きにしてパソコンに打ち込んでいきます。それが書く上でのメモになっています。一つのエッセイにつき原稿用紙12枚分の長さがあるから、出来事や思いを羅列するだけでは終わらない。だから「これを言いたいけれど、そのためにはあれも言わなくては」と混乱することもありました。でも、構成を考えることで頭のなかが整理されていく。「面白く読んでほしい」というサービス精神のようなものもありました。