「ようこそ! そしてお待たせしました。5年ぶりになりますが、ただいまです!」

 1万2500人の観客に笑顔で告げると、会場から大きな歓声が湧き起こった。

「みんなと騒げる場所を作りたい」という本人の希望が、ライブ開催の背景にあったという。ステージ上の彼の佇まいにも思いがあふれていた。花道を走る姿、スタンドマイクを握り歌い上げる姿、その一挙手一投足がエネルギッシュだ。

 特にそれを痛感したのが、アルバムのリード曲「One and Only」を披露したときだった。B’zの稲葉浩志が詞を書き下ろしたハードロックナンバーで、電飾や火花の派手な演出と共に披露された。

“等身大の木村拓哉”を表現するという意味では、サーファーとしても知られる彼の趣味嗜好を生かした演出も各所に見られた。開場BGMはサーフミュージックの大御所ジャック・ジョンソン。グッズは「木村拓哉がオーナーのショップがあったら」というコンセプトで、Tシャツやタオルに加えてビーチサンダルなどのサーフ系グッズが普段使いしやすいデザインで展開されていた。

 アルバムのもう一つのリード曲「サンセットベンチ」では、海辺の映像を背景にゆったりとしたメロディーを歌い上げ、サーフカルチャーに通じる雄大でリラックスしたムードはライブでも随所でポイントになった。

「沢山のアーティストの力をいただきました」と語ったように、「Go with the Flow」は、前述のB’z稲葉、槇原敬之、森山直太朗、[Alexandros]の川上洋平など、自身がホストをつとめるラジオ番組「Flow」にゲストとして招いたミュージシャンたちとの親交が結実した一枚でもある。

 ラジオと音楽活動が結びついていたこともあり、ステージ上には、ラジオで彼が見せるような気取らない自然体のムードがあった。トークパートでは、事前にアンケートで集められた観客からの質問に答えるラジオの公開収録のようなコーナーも設けられた。

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