タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
【新聞に掲載されたGODIVAの「義理チョコをやめよう」の広告はこちら】
* * *
今年のバレンタインデー、職場でチョコ配りはありましたか? 2018年、有名チョコレートメーカーGODIVAが「義理チョコをやめよう」と日本法人の社長の署名入りで日経新聞に新聞広告を出しました。毎年高価な義理チョコを受け取るであろう男性たちが読む媒体で「バレンタインデーは嫌いだ、という女性がいます。義理チョコを準備するのがあまりにもタイヘンだから。気を使う、お金も使う、でも自分からはやめづらい(一部抜粋、以下同)」と、女性なら周知の事実をはっきり伝えたのです。これに気づいている男性はどれくらいいるでしょう。
女性の所得平均は男性の3分の2ほどなのに、毎年職場の男性に献上するために義理チョコで散財しなければならないのは理不尽です。男性だって、これまた謎の習慣で翌月にお返しをしなくてはならないのですから、内心迷惑でしょう。喜ぶのは菓子メーカーだけです。しかしGODIVAは「義理チョコはこの時代、ないほうがいい」と断言。「そもそもバレンタインは、社内の人間関係を調整する日ではない。だから男性、とりわけ会社のトップから、彼女たちにまずひと言、言ってあげてください。『義理チョコ、ムリしないで』と」と呼びかけました。女性が職場の男性に“感謝と好意”を表明する儀礼は性別役割を強化し、職場のジェンダー平等実現の妨げになります。やめたくても、力関係でやらざるを得ないことも。同社の社長はwithnewsの取材に「『あげる人』にとって『楽しい』かどうかが重要」と回答しています。
もはや義理チョコは「一部のもらう人だけが楽しむ」イベント。日本の職場環境への深い洞察に基づき、ジェンダー平等を尊重する姿勢をはっきりと打ち出した同社に拍手を送ります。あれから2年、あなたの職場は変わりましたか?
※AERA 2020年2月24日号