一方、吉形医師の友人には人生経験を積み、金銭的な余裕もある40代になってから出産することを選択した人もいる。
「どのタイミングの出産がいいかは、カップルそれぞれ。ただし、出産を将来的に考えているなら、肉体的なリミットや妊娠しやすい体作りなど正しい知識を持っておくべきです」
都内の外資系企業に勤める女性(37)は、前に勤めていた会社で1年働かないうちにリーマン・ショックを経験。「社員を半分にする。経験が浅い人から切っていく」と通知され、退職を迫られた。この体験から、出産後もポジションを失わないためには経験を積んで存在をアピールすることだと決意。いまの会社に転職した26歳のときから、終電までの残業もいとわずこなした。
不妊治療の末、31歳で娘を出産した。ところが1年間の育休中に「専業主婦になってほしい」と望む夫との間に溝が生まれ、離婚。職場復帰とワンオペ育児がほぼ同時にスタートした。なんとか乗り越えられたのは、「捨てられるところは捨てる」「頼れることは頼る」と腹をくくったからだ。
育休中から積極的に同僚と連絡を取り、復帰後も時には昼食を抜いて仕事をした。残業は免除してもらい、保育園にお迎えに行った。朝5時の起床をキープするため、手作りの夕食は「捨て」、外食を大いに活用した。代わりに、娘との触れ合いの時間を確保した。
娘はこの春から小学校に通う。1年前から母親が同居するようになり面倒を見てくれるため、残業も引き受け、帰宅が深夜近くになることもある。だが、病気や行事のときは娘のために時間を割きたい。
「仕事は逆算し、常に早めの進行を心がけているので、結果的に効率も、仕事の質も上がりました」
(ライター・羽根田真智)
※AERA 2020年2月17日号