AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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映画の冒頭。柔らかく品のある踊りを披露する若きダンサーに対し指導者から怒号が飛ぶ。
「ナヨナヨするな」
「もっと銅像のように」
こんなにも強さや男らしさを強要するダンスがいまの時代に存在するのか、と胸が締め付けられる。「ダンサー そして私たちは踊った」の主人公メラブが踊るのは、“ジョージアン・ダンス”と呼ばれるジョージアの伝統舞踊。アルバイトをしながら家計を支えるメラブの前にある日、魅力的な青年イラクリが現れ、自然と惹かれ合うようになる。
メラブを演じるのは、コンテンポラリーダンサーであるレヴァン・ゲルバヒアニ(22)。ジョージアにルーツを持つスウェーデン人監督レヴァン・アキンがインスタグラムを通し彼の存在を知り、オファーを続けた。
「子どもの頃は児童劇団に入っていたから、演技自体には興味があったんだ。活動的だった母がジョージアの劇場で働いていたこともあって、たくさんの舞台も見てきた」
それでもこのオファーに対し、なかなか首を縦に振れずにいたという。
「理由は、この作品が同性愛をテーマに扱っているから。役を引き受けることで影響を受けるのは、自分だけではないと思った。家族を始めとする周囲にも影響が及ぶかもしれない。それを受け入れるだけの準備が自分はできているだろうか、と考えてしまって」
「資金調達のためにまずは短い映像を」と言う監督の撮影に参加してみたところ、多くの学びを得ることができたので、最終的には役を引き受ける決断をしたという。
作中では「男らしく」という言葉が多用される。若い世代であっても日々の生活の中で、男性が強い社会だと感じることはあるのか。そう尋ねると、「まさにマッチョ文化が蔓延しているように思う」。