「羊文学」の3人。左から塩塚モエカ、フクダヒロア、ゆりか/スペースシャワー・ミュージック提供
「羊文学」の3人。左から塩塚モエカ、フクダヒロア、ゆりか/スペースシャワー・ミュージック提供
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新ミニアルバム「ざわめき」/スペースシャワー・ミュージック提供
新ミニアルバム「ざわめき」/スペースシャワー・ミュージック提供

 甘美だけど苦味もあるメロディー、躊躇なくまっすぐにのびる声、青白く燃える炎のようなギターサウンド……羊文学(ひつじぶんがく)という20代のロックバンドの曲を最初に聴いた時、ある種の純文学を読んでいるような印象を抱いた。

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 いわばアート性あるロック・ミュージックだが、作品の世界に踏み込むほどに気づかされたことがある。激しく情緒的なだけではない、過剰でドラマチックな展開にも頼っていないバンドである、ということだ。むしろ、どこか淡々と目の前の事象を眺め、静かに自身の中で昇華しているような。長い夢の中にいること、それがいつかは覚めてしまうことに気づいているかのような。だから、純文学というより、ロマンと空虚さを併せ持った反ユートピア的小説と言った方がいいかもしれない。

 羊文学は2012年に東京で結成。17年に最初のミニアルバム「トンネルを抜けたら」を発表してからは、様々なイベントやフェスへの出演で力を発揮し、新世代注目のバンドとして話題を集めるようになった。現在のメンバーは塩塚モエカ(ヴォーカル、ギター)、フクダヒロア(ドラム)、ゆりか(ベース)の3人。ラジオ・パーソナリティーやモデル経験もある塩塚が基本的に曲を作っている。18年には最初のアルバム「若者たちへ」をリリース。これまでフジロックにも出演、カナダへのツアーも敢行した。

 3人によるバンド・アンサンブルは、80~90年代以降のオルタナティヴ・ロックのマナーをしっかり咀嚼(そしゃく)したものだ。聴く世代によっては「懐かしい」とさえ感じるそんなエッジーなギター・ロック・サウンドから、孤高の空気をまとった塩塚のヴォーカルが凛々しく立ち上ってくる。挑発的でも攻撃的でもなく、エネルギッシュなパッションの中にただただポツンと声と言葉がある。

 5曲入りの新ミニアルバム「ざわめき」で、わけても1曲目に収録された「人間だった」は、このバンドが新たな領域に入ったことを伝える重要な曲だ。

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新ミニアルバム「ざわめき」が残す不穏な印象とは