今西さんは、「伝えてよかった」と感じている。
手術で入院中、LINEで息子がこう伝えてきた。
「受験がどんな結果になっても、自分の肥やしにしていく」
今西さんはこう返した。
「人生、経験から何を学ぶかの方が重要。お母さんも、乳がんから何かを学びとろうと思ってる!」
子育て世代のがん患者のコミュニティー「キャンサーペアレンツ」代表理事の西口洋平さん(40)は、「子どもへがんを伝える方法は百人百様。『これが正解』はない」という。
西口さん自身、当初は「解」を求めた一人だった。5年前、35歳でステージ4の胆管がんと診断を受けた。娘は当時6歳。
「小1だった娘とは、『これが欲しい』とか、『あれが好き』とか、短いフレーズの会話だけでしたから、がんのことをどう伝えればいいかと悩みました」
半年ほどして、妻が娘に何げなく、がんという病名を伝えた。お父さんがその病気と闘っていると。西口さんは全く知らずにいた。ある休みの日にテレビを見ていたら、芸能人のがんのニュースが流れた。
「あ、お父さんと一緒の病気」
娘は思いの外、自然と受け止めているとわかり、ホッとした。
「僕が『場』を作ったのも、こうした解がない課題について仲間と情報を共有し、ともに考えたかったから。場は答えはくれないけれど、羅針盤になるヒントはくれる。たとえ失敗しても、また新たな相談もできます」
(ノンフィクションライター・古川雅子)
※AERA 2020年2月10日号より抜粋
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