渡っても渡ってもまた現れる下鴨神社の小川。いったいなぜ?
渡っても渡ってもまた現れる下鴨神社の小川。いったいなぜ?
見つけてきたもの・ことを模造紙で表現する子どもたち
見つけてきたもの・ことを模造紙で表現する子どもたち

「今日はどんなことするんやろ?」

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 新年最初の開講日、たくらみ中学年(小学3・4年生)クラスの生徒が授業開始早々ポツリとつぶやきます。

 1月に限り、通常のプロジェクト学習とは異なる特別プログラムを実施する旨を事前にご家庭に連絡していたため、その内容がとても気になるようです。

 私は早速、特別プログラムの概要を説明しました。

「特別プログラムは3回連続授業で行います。今日はその第1回やね。今から外に出かけて、なんとなく気になるもの・ことを感じながら歩きまわってみよう!」

 子どもたちはわかったような、わからないような表情で私を見つめます。

「Feel℃ Walk(フィールドウォーク)」と名付けられたこの活動には大切なキーワードが二つあります。

 それは「なんとなく」と「とりあえず」。

 何かすごい発見をしなければと気負う必要はなく、自分が気になったもの・ことをどんどん集めればオッケーと伝えると、彼らのやる気にスイッチが入りました。

「なんとなく」と「とりあえず」を意識しながら愚直に情報を集めてみることで、自分が追究したいテーマがぼんやりと浮かび上がってくる感覚を体験してもらうのがプログラム全体のねらいです。

 普段、探究堂では目的があらかじめ設定されている学びに取り組むことが多いだけに、授業がどのような展開を見せるか楽しみです。

 私たちは教室の最寄りの神社である下鴨神社までの道とその周辺をうろうろ探索することにしました。

 たくらみキッズがまずはじめに興味を持ったのは、参道の入り口にある葵公園です。

 背の高い生け垣と生い茂る樹木に覆われて中は薄暗く、探究堂の授業ではこれまで一度も立ち寄ったことがありません。

「すごっ、松ぼっくりがめっちゃ落ちてる!」

 園内に足を踏み入れると、コロコロした物体が真っ先に目に飛び込んできました。

 子どもたちは一目散に走り出し、お気に入りのものを拾っては袋に入れていきます。

「なんか、あの場所だけ色が違う!」

 公園の一角に立派なサザンカの木が植えられていました。

 木の下一面にたくさんの花びらが落ちていて、そこだけまるで赤い絨毯が敷かれているみたいです。

「みんなちょっと来て!こんなん見つけたで!」

 目を凝らしてみると、松の木の幹にセミの抜け殻がくっついていました。

 報告しに来てくれた男の子は季節外れの発見に興奮が隠しきれません。

「この人、誰やろう?目がギョロッとしてんなあ」

 ふと周りを見渡すと、公園には不似合いな胸像がでんと控えていました。

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山田洋文

山田洋文

山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。

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