メロディさん自身もリポート中に小突かれたり口を塞がれたりはよくあることで、一度、武装警官が撃ってきた催涙弾によって呼吸困難になった。助けにきてくれた救護班が「負傷者がいるのでここに撃ち込むのはやめて!」と警官隊に向けて叫んだら、わざとまたそこに催涙弾を撃ち込んできたという。
「警察はどんどん狂暴化しています。彼らの蛮行を撮って報じている私たちプレスがいるせいでその事実を誤魔化せない彼らは、意識的に現場の記者を脅したり襲ったり……」
プレスへの攻撃は別の形でも行われている。親中派は前行政長官らが、数年前から蘋果日報に広告を出す企業に圧力をかけており、それもあって同紙の経営は悪化。廃刊を免れるべく人員削減などを断行したが、その後、紙よりウェブに比重を高めた同紙は民主化運動の高まりとともに財務的に持ち直している。
「誰に対しても、どこに対してもひるむことなく報ずるべきことを報ずるという私たちの姿勢は創刊以来一貫している」と熱く語るキョンさん。一方のメロディさんも、「私たちは民主派の主張を支持していますが、現場での取材・報道は公平・公正にやっています」
世代も性別も違う2人だが、覚悟を決めたその表情は、同じだった。(ジャーナリスト・今井一)
※AERA 2020年1月20日号