そしてもっとも呆れるのは、内容のぜいたくさです。お子さまランチのためだけに存在している食べ物が多々あるのです。某レストランで娘が注文したお子さまランチに桃味のおいしそうなデザートが付いており、私も食べたかったのでメニューをくまなくチェックしたのですが、単品の商品は確認できませんでした。その桃のデザートは、お子さまランチのためだけに仕入れられていると考えられます。また、メインはオムライスとハンバーグとエビフライとクリームコロッケで、メインが4種類もあるなんてそれだけでうらやましいですし、これらはすべてお子さまにとって食べやすいよう小さめに作られていました。単に大人用のオムライスを取り分けたのではなく、わざわざ子ども用に少なく卵を溶き、少なめのライスに包み、小さな器に盛りつけていることが見て取れました。なんたる手の込みようでしょうか。
アメリカの飲食店にも子ども用のメニューはありますが、大人用のピザからアーティチョークやアンチョビを抜いたチーズだけのピザとか、大人用のチキン&ダンプリン(スープ)から取り分けたものがせいぜいで、恐竜の形に焼いたパンケーキなどがあればいいほうです。「子どもなんだから腹が膨れて栄養が取れればそれでいい、ぜいたく品は自分で稼げるようになってから自分で買いなさい」というのが大人たちのスタンスです。「お子さま」のために手間暇かけられている日本のメニューって、本当にヘン。でも、子どもには大好評でした。次に日本へ帰ったときは、丸くなった両親と我が子を連れてもっとお子さまランチ開拓をしようかな。
※AERAオンライン限定記事
◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi