トランプ米大統領は「米国は軍を使いたくない」と報復攻撃は避けたい意向を表明した/1月8日、ホワイトハウス(c)朝日新聞社
トランプ米大統領は「米国は軍を使いたくない」と報復攻撃は避けたい意向を表明した/1月8日、ホワイトハウス(c)朝日新聞社

 イランが米軍に対して行ったミサイル攻撃。「米国人の死傷者はいなかった」として、今回はイランへの再報復を見送る考えを示したトランプ米大統領だが、弾劾裁判や「再選」戦略に影響はあるのか。

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 大統領再選を期すトランプ米大統領にとって、波乱の年明けになった。米軍は1月3日、イランのイスラム革命防衛隊の司令官を空爆で殺害。これにイランは激しく反発し、8日、米軍が駐留するイラク国内の基地を弾道ミサイルで攻撃した。報復の連鎖への不安が広がり、世界は一気に緊迫の度を強めている。

 日ごろ米軍の海外駐留を「カネの無駄」と切り捨て、中東やアフガンからの撤退を模索していたトランプ氏は、なぜそれと逆行する作戦を命じたのか。

■助言に耳を貸さない

 何事にも情動的。官僚の助言には耳を貸さず、自身の勘と感情に基づく判断で、とかく「予測不可能」とされてきたトランプ氏の政策だが、就任から3年たつと単純なパターンがあることがみえてくる。

・自らの再選戦略に欠かせないコア支持層を喜ばせる政策であること。たとえば最高裁判事への保守派の指名など。
・歴代大統領ができなかった「偉業」を成し遂げた印象をアピールできること。米大使館のエルサレム移転など。
・いわゆる損得勘定。中国など貿易競争国に対する制裁関税や、欧州、日韓など同盟国に対する防衛負担の増額要求など。

 こうした「公式」に当てはめてみれば、とっぴに見える今回の判断も、多少は合点がいくものとなる。

 キリスト教福音派など「親イスラエル、反イラン」の保守層は攻撃に喝采を送る。米紙によるとイラン司令官殺害作戦はブッシュ(息子)、オバマの各政権時代にも検討されたが、リスクが大きすぎるとして見送られたという。一方、作戦は兵員を大量動員するものではなく、無人機による空爆だった。

 とはいえ、過激派組織「イスラム国」(IS)の最高指導者の殺害作戦とは事情が違う。いくら米軍に対する敵対行動に携わってきた人物が標的だったとしても、主権国家の軍事機構に対する攻撃行為はまさしく「宣戦布告」に等しいふるまいだ。

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