稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
我が家名物ニンジンのおから漬け。ま、名物ったって食べるのは自分だけなんだが(写真:本人提供)
我が家名物ニンジンのおから漬け。ま、名物ったって食べるのは自分だけなんだが(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】我が家の名物「おから漬け」

*  *  *

 東京ではようやく本格的な寒さがやってきた。寒さは決して好きじゃないのに心の中でちょっと小躍り。というのは、ようやくアレが食べられるからである。

 朝、仕事場所のカフェへ行く途中で馴染みの豆腐屋に寄り、奥で朝ごはんを食べているお父さんに「アレ、取っといてね」とお願いしておく。で、頑張って仕事して昼に帰宅する途中、豆腐屋に寄ってソレを受け取る。

 ソレは袋いっぱいに詰まったホカホカのオカラ。朝頼んでおかないと産廃業者が全部持って行ってしまうのだ。

 家に帰るとさっそく、袋のオカラにザバッと塩を投入してよく混ぜる。塩加減は、食べてみて好みの塩梅にすればオーケー。そのおからの一部を取り出し、人参の千切りだのカブの薄切りだのを混ぜこんでビニールの切れっ端でくるみ、ぎゅっと空気を抜いて、てるてる坊主みたいにして首を縛っておく。

 で、午後の仕事へ出かけ、夕方帰宅したら坊主の首をおもむろにほどき、ごま油やオリーブ油などたっぷりかけて食す。これが我が「おから漬け」である。実にうまい。もちろん数日漬け込みっぱなしでも良い。いくらでも食べられて全然飽きないので、毎日のように仕込んでは食べている。野菜は生で食べられるものはそのまま漬ければいいし、ブロッコリーなどは軽く茹でて投入すれば良い。

 おから料理といえばずっと、野菜や干し椎茸などを入れて甘辛く炊いたものしか知らなかった。だがあれはそれなりに手間がかかるのでつい大量に作るも、案外甘くてたくさんは食べられない。そして腐りやすい。なので冷蔵庫を手放してからすっかりご無沙汰していたが、この食べ方を知って以来、冬はおからまみれである。夏も作れるのかもしれないが、やはり暑さには弱くて何度か腐らせた。なのでこの時期だけの楽しみである。

 興味のある方は是非お試しいただければと思う。食物繊維も善玉菌も豊富な健康食。フードロス削減にも繋がる。ついでにタダ同然。これぞスーパーフードだと私は思う。

AERA 2020年1月13日号

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稲垣えみ子

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稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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