沖縄県の玉城デニー知事が、基地問題の議論を深めようと全国を巡る「トークキャラバン」を実施中だ。過去にも沖縄県は同様にメッセージを発信してきたが、今回は一部で批判の声が上がっている。これまでと何が違うのか。AERA 2020年1月13日号では、沖縄県や過去の運動に詳しい識者に取材した。
【写真】「スタンド・バイ・ミー」などを弾き語りで披露した玉城デニー知事
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ネット上では「登壇者は反対派一色でバランスがとれていない。県は暴走気味」などと批判するメディアも。県の行動を「政治的」と判断し、距離を置く首長もいる。
キャラバン開催に伴い玉城デニー知事が大阪府庁を訪れた際、吉村洋文知事は面会しなかった。その理由を吉村知事は「日程の調整もあるが、大阪府庁として実務的な立場で中立公正な立場で対応させてもらう方が誠実だと思った」と記者団に説明。事務局のNPO法人「新外交イニシアティブ」(ND)についても「非常に政治的に偏った方で構成されている」と言及し、キャラバンは「役所の公務でするべきではないのでは」と持論を述べた。
沖縄県議会でも同様の指摘が自民党議員から相次いでおり、県当局は答弁を重ねている。
キャラバンについて県は「玉城知事は辺野古新基地阻止を公約に掲げて当選しており、県行政として辺野古移設の問題点を訴えることは何ら問題ない」と反論。NDに関しても、特定非営利活動促進法で「政治上の主義」を推進、支持、反対することを主たる目的としないことがNPO法人の要件の一つとされているとし、「所轄庁である東京都からNPO法人の認証を受けており、政治的中立性は保たれている」との見解を示す。
基地問題への理解を求め、沖縄県の知事や周辺が全国を行脚するのは今回が初めてではない。
1995年に起きた3人の米兵による少女暴行事件を受け、当時の大田昌秀知事は「沖縄からのメッセージ」事業を展開。2003年には自公が支える稲嶺恵一知事も相次ぐ米兵犯罪を受け、基地を抱える全国の知事らを回って日米地位協定の改定を訴えた。だが、本土メディアのあからさまな否定的論調や、政治的分断が表面化することはなかった。一部とはいえ、なぜ今回は批判が上がるのか。