12月に行われたフィギュアスケートの全日本選手権で、羽生結弦が敗れた。死力を尽くしたが、過密スケジュールもあり、フリーで崩れた。ただ、成長のヒントは得た。次は世界の頂点をめざす。全日本選手権での羽生の姿に迫ったAERA 2020年1月13日号の記事を紹介する。
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冷たい冬の雨が、なめらかな曲線を描く東京・国立代々木競技場の屋根を打ちつけていた。2019年12月22日。「あの」「うん」「うーん」。リンク脇の別室に設けられたミックスゾーンで、フリーの演技を終えた羽生結弦(25)が言葉を選ぶ。そのわずかな時間で、心を静めているかのようだった。
負けた。
4年ぶりに出場した全日本選手権で羽生は宇野昌磨(22)に続く、総合2位に終わった。
「いやあ、弱いなって。ははは。本当に、今もう、弱っちいので。すごい。ループもトーループも跳べないようじゃ、話にならないですし。アクセルも跳べないようじゃ、本当に話にならないですし。はあ……」
冒頭の4回転ループで着氷が乱れた。続く4回転サルコーは決めたが、3本目のジャンプ要素である3回転ルッツは、まさかの2回転になった。4回転トーループも、ぐらついた。
「なんか、びっくりしちゃって。自分のなかでも、『あれっ』て思って。感覚がふと、本当に乖離してたんですよ。いろいろ考えましたね。どこでリカバリーできるのか、とか。ただ、そんなリカバリーする体力がなかったです。なんか、ホント、そんなリカバリーするんだったら、意味ないなってすごい思っていました。はあ、なんか、もうわかんないです。もうグジャグジャなんで」
その後もジャンプはいつもの精度を欠いたまま戻らない。最後は絶対的な自信をもつトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)で転倒した。
羽生が日本人選手に敗れたのは14年のソチ冬季五輪後、これで2度目だ。
前回は同年11月のグランプリ(GP)シリーズNHK杯。1位村上大介、3位無良崇人に続き、日本人選手として3番目になる全体4位で大会を終えた。この時は約3週間前のGPシリーズ中国杯のフリー直前6分間練習で、閻涵(イエンハン・中国)と激突。体を強く打って顔から出血し、全治2~3週間と診断された。いわば「病み上がり」の状態での強行出場だった。