日本では「忘年会スルー」「終活年賀状」など古くからの慣習を見直す動きが起きている。だが、グーグルではそうした「つながり」を価値と捉えて、「儀式」として積極的に取り入れている。AERA 2020年1月13日号では、IT企業の慣習と働き方を特集。取材を進めてわかった、グーグルの「儀式」とは?
* * *
赤、黄、青、緑の鮮やかな色使いに、ちょこんとプロペラがついた奇天烈な帽子。ぱっと見、アナログ感は強いが“開発”したのは、テクノロジーの巨人グーグルだ。
かぶるのは「Noogler(ヌーグラー)」と呼ばれる新入社員たち。革新的なアイデアが浮かぶとプロペラが回りだす──というわけではなさそうだが、ただのシンボルと侮るなかれ。布とプラスチックでできたこの「ヌーグラーハット」にも、意味がある。
上級役員もインターンも、新しく入社した社員はこの帽子をかぶる。誰から見ても新人とわかり、帽子が「質問させてもらいますんで」のサインになるという。加えて、グーグルに入社したという実感と一体感を味わうことが、帰属意識にもつながる。
「私たちは組織として常に進化しています。“ritual(リチュアル)”を通じて、変化を促すことができる。ヌーグラーハットもその一つです」
そう話すのは、米グーグルのチーフイノベーションエバンジェリストのフレデリック・G・プフェールト氏だ。
リチュアル。すなわち、儀式の意。
仰々しく聞こえるかもしれないが、昨年のラグビーワールドカップでニュージーランド代表「オールブラックス」が試合前に演じた「ハカ」も儀式だ。迫力ある踊りは、選手たちの意識を高め、チームが一つになる。
「どれだけ小さくても、価値と意味を持つ具体的な慣習行為を私たちはリチュアルと呼んでいます。儀式によって、組織が大切にするコアバリューを意識付け、活性化させることができるのです」(プフェールト氏)
冒頭のヌーグラーハット以外にも、グーグルのなかには、さまざまな儀式がある。